「相変わらず長良さんはストイックだなぁ・・・」というのが第一印象。ある意味で自分のテリトリーに近いところなので、どこに苦労しているか手に取るように分かる。故に感想はとても書きづらい。
ということで、書かない! ・・・というのも何なので(^_^;
思い着くまま、あまり気合いを入れずに。
よく「似ている」と言われる長良さんとウチですが、それは高校演劇の中でカテゴライズするからで、古典劇へのアプローチを考えると長良さんは超硬派、新座柳瀬は超軟派。ホントなら仲良くなれないぐらい違います。
まぁ、なかなか伝わらないけど・・・(^_^;
とにかく、長良さんはストイック。
まず、台本です。長良さんはいつも原作の趣をとても大切にしています。今回の『から騒ぎ』も丁寧なお仕事でした。このきちんと場を追っていく形で2時間半ぐらいのテキストを70分程度にするのは容易ではありません。特に巡査が残っていたのには震えました。巡査残しでここまで短くするか。お見事。
その上、女性キャストのみでシェイクスピア。
まず、元々全部、男性キャストが演じていた台本を女性だけで上演。その上、皆さん「古典」とまとめがちだけど、ショーとワイルドはせいぜい夏目漱石。シェイクスピアは近松門左衛門よりさらに100年位前。長良さんの普段の作品とは文体が全然違うのです。つまり、僕から観ていると孤高に「茨の道」を行く長良さん(←褒めてます ^^;) 『から騒ぎ』は長良さんにとって、「いつも通りの古典劇」ではなく、とても大きな挑戦だったというわけです。
前置きが長くなりましたが、この辺は一見すると分かりづらいところなので念のため。
まず、きちんとシェイクスピアの科白を言いこなす実力に脱帽。特にベネディックとベアトリスの丁々発止のやり取り、クローディオがヒーローを不実を責める場面などの科白の言い回し、ドン・ペドロの差し込む科白の絶妙な間の良さ、レオナートのクローディオへの怒りの言葉などは良い感じでした。
また、ドン・ペドロたちがベネディックを嗾ける場面でのベネディックの受けの芝居やヒーローと侍女がベアトリスを嗾ける場面の侍女の思いきり、ドグベリーの道化っぷり、ボラチオの後悔など見所が盛り沢山。それぞれのパートで中心となる役と脇を固める役がしっかりと噛み合って、見応えがありました。
役者さんばかりではなく、スタッフワークもしっかりしているのが長良さんの素敵なところ。まずは衣装。揃いの軍服の肩章や勲章、サッシュなどのデコレーションが作り込まれているのが格好良かった。娘役のドレスはいつも素敵。メイドさんも可愛い。小物も作り込まれていました。
照明も音響も物語の世界観を引き立てていましたし、大道具も下手に高さのある印象的なものでした。広い舞台上にきちんと演出の意図が感じられて、舞台運びにも安心感がありました。
何より、最後の結婚式の場面で大団円の幸福感が伝わってきて、良い作品を観たなぁという満足感がありました。
顧問の先生に厳しくとも言われたので、些末なことを少しだけ。男役のメイク(特にアイメイク)と髪型はもう少し研究の余地があるかなと。特に長髪の結び方と位置、短髪は髪の毛のボリュームを押さえるだけで、かなり印象が変わります。あと、軍服以外の男役の衣装はもう少し工夫の余地がありそうです。
話を聞くと稽古期間はかなり短かったそうな。そうとは思えない熱演でしたし、良い作品が観られたなぁ・・・と幸せな気持ちになりました。
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