『ピグマリオン』長良

とても原作に忠実な『ピグマリオン』。

あまりに忠実なので『ピグマリオン』の舞踏会以降の場面が嫌いだということを改めて確認できました(←褒めてます ^^;;)

こちらも長良さん得意の場面順追いのテキストレジ。『真面目が肝心』の時もそうでしたが、どうして1時間に収まるのか不思議でならない。基本的にバーナード・ショーの戯曲をそのまま上演する場合は、主要な登場人物達はみんな強くないといけないというイメージがあるのですが、正しくそのイメージ通り。

イライザもヒギンズもピカリングもピアスもミセス・ヒギンズも個性的でブレない強靱さのあるキャラクター造形。イライザは下町の花売り娘から貴婦人へと成長していく過程を演じる難しさがありますが、その成長過程に応じたキャラクターのグラデーションが鮮やか。

それを受けるヒギンズも頑なに自身の変化を拒絶し、表面的に体面を取り繕うことに終始する様子を演じるのは難しいのですが、これも見事な仕上がり。

この二人のキャラクター造形が見事だったので、舞踏会後やラストの場面で噛み合わない感じが絶妙にイヤな感じ(←とても褒めています ^^;;;) これを観て、審査員はよくもまぁ『マイ・フェア・レディ』を引き合いに出したなと、何年越かでイラッとしたりして。そのくらい、きちんと組み立てでした。

脇を固めるピカリング、ピアス、ミセス・ヒギンズなどの居住まいもきちんとしていて作品の世界観がしっかり支えられていました。この支えがないと、イライザとヒギンズの丁々発止のやり取りで世界観が崩れてしまいます。こういったところに長良さんが蓄積してきた経験の厚みが感じられました。

スタッフワークもいつも通り良く練習されていて、何回かある場転も実にスムーズに行われるし、照明や音響も丁寧。舞台美術の作り込みにもこだわりが。このスタッフワーク力が場面を順に進めていく形の上演を可能にしているわけで、これはなかなか真似できないストロングポイントだと感じます。

また最後に強いて言えば2点。最初のアルフレッドに清潔感がありすぎたかなと、イライザがあれだけ小汚く造形していたのに、アルフレッドが綺麗すぎる気が。もう一点はヒギンズとピカリングの舞踏会後の場面だけはフロックコートか燕尾服が良いなぁと。イライザがドレスなのであのスーツはちょっと…

さて、長良さんの上演を実際に観るのは2018年末の『My Name!』のブロック大会の壮行公演、2019年夏の『ドリアン・グレイの肖像』の県大会に続いて3回目。観るたびにアプローチが深化しているように感じます。今年は色々なことがままなりませんでしたが、年末に2作品を上演する心意気に素敵。

2018年秋、岐阜からの電話から始まった交流ですが、あんなことになって、こんな感じで続いていることはなかなか素敵なご縁を頂いたなと、こんな時にも顔を出してくれる演劇の神様には感謝しかありません。だからこそ、大切にしなければならないなと思いますし、切磋琢磨できたらいいなと思っています。

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