『バスに乗る…』甲府南(県大会)

山梨県の県大会。本当は埼玉県と同日程のはずだったのですが、色々あって11月28日・29日に変更となりました。色々あったと聞いていますし、参加する学校にとってはかなり困難な状況が発生しているとも聞いていたので、喜んではいけないのでしょうが、結果として観に行くことが出来る日程になったので少し嬉しくもありましたm(_ _)m

本当は豪華ラインナップの審査員の講評も聞いてみたいし、2日間フル参戦しようかとも思っていたのですが、直近の土日に行った群馬県の県大会の審査での消耗が激しく、色々と考えて甲府南だけにすることにしました。

9時49分のバスに乗って、国分寺駅へ。そこから中央特快で立川駅、特急スーパーあずさ号で甲府駅に着いたのが11時33分頃。今年、3度目の甲府駅ですが初めて改札を出ることとなりました。南口に出て、大きな武田信玄公の像を見上げた後、ホールまで行ってしまうと、お昼が食べれないような気がしたので駅前で食べることに。『小作』というお店でほうとうを頂きました。

甲府駅前の武田信玄像
甲府駅前の武田信玄像
小作の『秋の信玄セット』
小作の『秋の信玄セット』

お店を出たのが12時15分頃。行き先のコラニー文化ホールは初訪問なので道が分かるか不安でしたが、取りあえず案内を慎重に見つけながら何とか到着したのが12時25分頃、受付でパンフレットをもらい、ホールに入ると平日開催の切なさが漂っていました。見渡すと埼玉の事務局長閣下の姿が。群馬県の審査の話などをしていると今度はnatsuさんが登場。natsuさんは昼前の上演から見ているとのこと。そこをたつまくんが横切り、ご挨拶。意外と知り合いに会う県大会。本当は甲府南だけを観るつもりでしたが間に合ったので午後一、北杜さんの『Party People』から観劇しました。

北杜さんから甲府南さんのインターバルの間にたつまくんに千葉県や東京都の大会の様子を伺う。絶対、僕なんかよりも高校演劇界隈に詳しい。たつまくんの場合は劇団の演目捜しの側面もあるのだろうけれど、高校演劇を応援してくれる存在は大切。不真面目な僕なんかからすると大会を通しで観てくれるというだけでも貴重な存在だと思うし、観てくれて良いときも悪い時も率直に情報を発信してくれるというのはありがたい。話題にならないのが一番、切ないですから。そうこうしているうちに一ベルが鳴る。

いよいよ甲府南さんの『バスに乗る、九月、晴れ、帰り道。』。

実際に科白が少し変わっていたのか、そうでないのかは分かりませんが、全体的にシーンの繋がりがとても滑らかになっていたような気がしました。例えば1回目の走馬燈の入りや演劇部のシーンの終わりから告白のシーンの入りなど。もちろん、観るのが2回目だからそう感じられたのかもしれませんが、一方で2度目であっても、きちんと楽しむことのできる作品。2度観ても『なんでこんな脚本が書けるのかなぁ・・・(@_@)』という感じ。

上演については、もはや甲府南ファンなので『やっぱり面白いなぁ』と思って観ていました。今年、甲府南さんを観るのは4回目ですし、役者さんの顔と名前も一致し始めているので、本当に贔屓の劇団を観に来ているような感じ。主人公のナオコさんの科白は優しく切なく響きます。巨大化する前のあかねさんの『温かい』という言葉が印象的。帰りのバスの時間を丁寧に確認するミヅキさんの優しさ。ナオコさんに告白を試みる男子3人組の爽やかな元気さ。ナオコを取り巻くお母さん「たち」の素朴な科白回し。高校演劇にありがちな過剰な振る舞いが一切無い、静かな雰囲気に圧倒される暖かな作品。

いつも書きますが、中村先生の作品の凄さはそれを体現できる役者さんたちの凄さでもあります。大きな声で、元気の良さで、大きな動きで表現すると魅力が失われるであろう繊細な脚本を、絶妙なしなやかさで演じ抜ける甲府南の皆さん。今回の作品の魅力もそうした関係の中から浮かび上がっているのだと改めて感じます。部員さんたちの個性をしっかりと把握して、押しつけるのではなく寄り添うような宛て書き甲府南さんの作品を観るといつもその信頼関係の強さを感じます。

えぇ、ただのファンですが、何か(。・ω・。)

・・・さて、前回観た時に色々と書いているので、今回は今日新たに感じたことを中心に少しだけ記録しておこうと思います。何かというと、少し抽象的なことなので上手く伝わらないかも知れませんが『印象』のこと。ここでいう『印象』というのは作品の物語的な内容と言うよりは、作品全体を支配する雰囲気のようなもののお話です。

まずは声。甲府南の上演を観るのは今年4回目。最初はこまばアゴラ劇場、2度目は甲府南高校の会議室、3度目が双葉ふれあい文化館、今回がコラニー文化会館小ホール。最初の2回と後の2回では演目が違うので直接比較はできないと思いますが、会議室⇒アゴラ劇場⇒双葉⇒コラニーの順で大きな会場になります。上演の印象が小屋の大小によって、あまり変わらないように感じられました。

ヘンな良い方ですが、会議室の上演を観た時もちょっと声が聞き取りづらい部分があるのと『同じように』コラニーの小ホールでもちょっと聞き取りづらいところがあります。もちろん、大きな声を張り上げるつもりが無いのは百も承知なので、そういうことではなく、上手く伝わるかは分かりませんが、同じ声の大きさであれば、会議室のような教室での上演では声は大きく聞こえるだろうし、ホールでは小さく感じるはずで、会場が大きくなるに連れて声が聞こえなくなるってことは良くある話だと思うのですが、甲府南さんについていうと会場が大きかろうが、中くらいだろうが、小さかろうが受ける印象がほぼ同じ。これは調整のポイントがあって、役者さんたちがそれをきちんと踏まえているのだと思います。つまりは空間に対する適応力・調整力が異様に高いのではないか、と思うわけです。だから、作品の持つ印象が会場の大きさに左右されない。これはこういうタイプの作品には不可欠な特殊能力のような気がします。

次に空間。定型的なアドバイスとして『地区発表会の狭い会場で上手くいったら、大きな会場に行ったからって装置を大きくしたり、アクティングエリアを大きくすることはない』と言われることがあります。もちろん、その方が良いこともあります。甲府南さんはどうするのかなぁ・・・と思ってみているとビックリ。広くなった舞台を目一杯使用する様子。地区の会場もそれほど狭い舞台では無かったけれど、少なくとも上下に一間以上は広くなっているだろう舞台を目一杯。なので、真ん中のスペースが広く空いた感じになりました。物理的な距離が広がったので登場人物の多い動きのある場面が見やすくなった一方、少人数の場面では他の人物が視界に入らず空間が切り抜かれたように感じられ・・・結局どっちも上手くいってるじゃん!・・・不思議(@_@) 空間の埋め方や配置、振り方などが絶妙なのかなぁ・・・と思います。

次に照明。サスの位置が面白い。舞台の左右に役者が控えている舞台構成なのですが、主役のナオコさんがモノローグに使うサスを上手側の役者が控えているところギリギリのところに用意されていました。ギリギリなので他の役者さんが動くときにそのサスを縁取るような動線になります。普通はそうならないようにするためにサスを落とすのだろうと思うのですが、そういう使い方ではない。しかも、上手側の舞台中程の位置。主人公のモノローグにしては控えめな位置。なんとなく、この辺の位置関係に大きな舞台でも印象が変わらない理由がありそうな気がしました。また、同じような位置にサイズの違うサスが用意されていたような気も、これは気のせいかも知れないけれど。

とにかく、『大きな劇場も得意なんです』と仰っていた中村先生の言葉が改めて重く重〜くのしかかる(@_@)

結局、観ている間には結論はでなかったのですが、こういった要素が複雑に絡み合って、作品の印象が作り上げられているのでしょうし、他の高校演劇作品とは一線を画す上演になっているのだと思います。そして、やっぱり観ていて拒否反応がでないのです。直前の週末に審査に出かけていたのですが、改めて高校演劇を優しい気持ちでは観られないと再確認してしまったばかりだったのですが、甲府南さんの上演はスッと観られる。上手く言い表せないのですが、単純に上手下手ということではなく、やっぱり演劇らしい演劇なのだと思います。それは高校演劇で多数を占めるスタイルとは一線を画し、でも高校演劇として存在できる何かがある。この不思議なバランスの正体は一体何なんだろう。

う〜〜ん、語り尽くせぬ(@_@) まぁ、ゆっくり消化していこう(・ω・)

観劇後、たつまくんが近づいて来て、『「こんなの、書けんがなっ(>_<。)/」って気持ちが良くわかりました』と言ってくれた。でしょうとも(・ω・) あの物語の飛躍はどんな発想から生まれるのか皆目見当もつかない。才能という言葉で片づけることは簡単だけれど、諦めたら終わりですから、今はとにかく観て学ぶのみです。早く山梨オープンが来て、もう少し間近で中村先生のお仕事を観たいと改めて楽しみになって来ています。

その後、この日の上演だった甲府西さんの『盤上の沖縄戦』を観劇し、甲府を後にすることに。この日は中村先生にはご挨拶できませんでしたが、また何かの機会にお話を伺えたらと思いつつ帰路に。帰りはnatsuさんと一緒に帰ることにしたので中央線の各駅停車に乗車。あれこれとお話をしながら東京へと戻りました。

・・・と、こんなことを書いているウチに最優秀賞が甲府南さんというTweetが流れてきました。そうでしょうとも。ということで関東大会は人目につかないように甲府南だけコッソリと観に来ます(*^-^*)

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