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稲葉組ができるまで【2016〜2017 まとめ】

新座柳瀬2016-2017

※Xで連載していた20年振り返り企画『稲葉組ができるまで』を加筆・修正したものをまとめています。

【目次】 
 2005〜2010 始まりの朝霞西(『A Midair Knight’s Dream』とか『La Esperanza』とか)
 2010〜2012 ラブコメの始まり(『Twinkle Night』とか『I Got Rhythm!』とか)
 2013〜2015 高校演劇を諦めた日(『Love & Chance!』とか『Ernest!』とか『Eliza!』とか)
⇒2016〜2017 逆襲の新座柳瀬(『Love & Chance!』とか『Merry-Go-Round!』とか)
 2018〜2020 奇跡のようなこと(『Ernest!?』とか『Confession』とか)

2016『Angel in Broadway! =PREQUEL “The Clap Game!”=』(脚色)
(デイモン・ラニアン『ミス・サラ・ブラウンのロマンス』他による)

 デイモン・ラニアンの短編を組み合わせた作品で、ミュージカル『ガイズ&ドールズ』の元になっている作品。
 主演コンビがギャンブラーと救世軍の軍曹の物語ということで、いつもより少し大人に雰囲気な作品でした。
 この時の3年事情は複雑で。娘役はきちんと場数を踏んで成長し、男役の方も上手いのだけど、本番が近づくと「この作品が終わったら部活を辞めます」と宣言し、本番が終わると実際に数日来なくて、数日後に復帰するを繰り返す。
 そんなこともあり「今度も戻ってくるのかなぁ」と思いながら、演目とかを考えてました。
 でも、この作品のバチッと決まった悪役は彼女のハマり役でした。
 前半のラストシーンは後編のオープニングに繋ぎました。

2016『Angel in Broadway! =SEQUEL “The First and Last Romance!”=』(脚色)
(デイモン・ラニアン『ミス・サラ・ブラウンのロマンス』他による)

 コピスみよしでの後編
 初めて最初から最後までホリゾントの背景を使い、その前に夜景パネルを立てました。夜景パネルはビルのシルエットに切り抜き、その状態から無数の窓を繰り抜きて白い寒冷紗を貼って、その裏にLEDライトを仕込んだものでした。
 舞台装置の後方走路には会場の平台を使用したのですが、立込にも時間がかかるし、強度も足りずに問題が発生したため、これ以降は会場の平台などは借りずに、必ず持ち込むようになります。
 劇中にはその後、いくつかの作品に登場することになる『クマリレー』が初めて登場したのもこの作品でした。
 さて、この作品の主人公2人があまり本心を見せない難しさがあり、特にヒロインのサラは私の作品の中でも、かなり年上ヒロインで難易度高め。でも、この時の3年娘役が演じてきた役を振り返ると、そんな大人な役が似合う気がして、娘役合わせで選んだ演目でしたが、特に難しいであろう『ソロモンの雅歌』の場面も期待通りにこなしてくれて、新たな作品ラインナップの可能性が開けました。

2016『Love & Chance!』【地区】(翻案)
(ピエール・ド・マリヴォー『愛と偶然の戯れ』による)

 2013年度に6期生の卒業公演用に書いた90分の作品を新たに書き直して60分に仕立てた作品です。
 大道具は初演時からは大幅に見直しました。特にこの時はステンドグラスが光るラストシーンのイメージが先にあったので以降、使い続けることになる高さ230cmの両開き扉を作りました。これが通算13枚目の扉です。
 しかし、地区の時には、まだステンドグラスが光らず、エリア分けもシンプルに白い枠で表現。また、娘役の衣装も足りておらず、リゼットがピンクのドレスを着ている。階段の背中合わせの場面もなく、ラストもドラントとシルヴィアで終了。
 今、振り返れば、もっと出来ることがあったように思えますが、この時は出来ることを精一杯を詰め込みました。
 そして、講評では「独特で得意の高校演劇的ではない演技スタイル」と評されて、5年ぶりに中央発表会へ推薦されたのでした。

2016『Love & Chance!』(翻案)【中央】
(ピエール・ド・マリヴォー『愛と偶然の戯れ』による)

 中央発表会では中央扉横のステンドグラスに灯入れし、部屋のエリア分けをブルーパンチに変えるなどの変更。
 脚本・演出面では階段の場面の背中合わせやラストシーンを2カップルのハグに変更し、概ねこれ以後の上演と同じ形となりました。
 講評では「マリヴォーはフィガロの結婚の作者」との発言が、事実誤認の講評が一番堪えます。
 でも、他のお二方がウチの作品が「どこの学校にも似ていない」と評してくださり、強く推してくださったそうです。

 この時、嬉しかったこと。
 とてもお世話になった劇場の照明さんが上演後に、
 「三谷の芝居の客席の盛り上がり方がこんなだったなぁって思い出したよ」と。
 昔、東京サンシャンボーイズの照明をされていたそうなお世辞でも嬉しかった
(第65回埼玉県高等学校演劇中央発表会 優秀賞)

2016『Love & Chance!』(翻案)【関東】
(ピエール・ド・マリヴォー『愛と偶然の戯れ』による)

 5年ぶりの関東、会場は5年前と同じ新潟のりゅーとぴあ。
 特に印象的だったのは照明さんのこと。
 前回もそうだったけれど、照明のプランを説明すると「埼玉の芸術劇場、負けるわけにはいかないからな」と全く同じエリア分けを実現してくださった。
 これまでなかなか良いものが準備できなかった娘役の衣装も、この公演の時にはようやく準備完了。特にヒロインの衣装は当時、副顧問だった最強の家庭科の先生が、古着で購入したドレスにレースなどの装飾を施してくださって、高級感が出るようにリメイクしました。
 講評では「自分たちから遠い距離にある役に果敢に挑んでいる」と評されます。前年まで地区発表会で真逆のことを言われ続けてきたことを思えば、十分に報われた感じがありました。
 そして、結果は最優秀賞、全国に推薦、20年間で唯一の創作脚本賞もこの時でした。
(第52回関東高等学校演劇研究大会
 最優秀賞・創作脚本賞)

【補足】高校演劇サミットと、精華と、甲府南と
 関東大会の直後に開催された『高校演劇サミット2016』を観に行き、精華高校と甲府南高校を観たことは大きな出来事でした。
 精華さんとはこれ以降、合同東京公演2回をはじめ、発表会を共にしたり、ウチの演目を上演してくださったりと、なんか同盟を結んでいるような関係になっていきます。
 他方、ナカムラ先生の作品をナカムラ先生以外の演出で観た時に一度も面白いと思ったことがなかったのですが、(↑ナカムラ先生にもこの話はしています、念のため……)高校演劇サミットでナカムラ先生の作・演出による『歩き続けてときどき止まる』との出会いはとにかく鮮烈でした。
 このことは演出って大切だなぁ、と改めて再確認する機会となりました。
 この後から旅行しづらくなったあの頃まで、甲府南さんの発表会をできるだけタイミングを合わせて、甲府まで観に行くようになります。

2016『Ernest! =Before PREQUEL “A Rush of Scandals!”=』(脚色)
(オスカー・ワイルド『真面目が肝心』による)

 全国が決まり、3月に関東キャスト最終公演の開催が決まる。その一方で卒業公演をどうする?となりましたが、それはそれでやりたい、とのこと。
 でも、ラブチャの稽古もしないとなので、同じ装置で別の話を作ることになりました。
 卒業する3年生にどんな演目が良いか聞くと、2年の時に上演した『Ernest!』前編で2人が演じた悪役カップルのような役をやりたいとのこと。
 それならと前編で語られていた2人の悪事遍歴の作品を作ってみることに。つまり、前編の前編作り。本編の前日譚の前日譚なので、もはやほとんど創作。
 この年の3年生は『Angel in Broadway!』やこの作品のように少し大人な作品が良く似合うから、悪役が中心人物となるこういう作品も似合ったのかなと思います。

2016『Love & Chance!』(翻案)【関東キャスト最終】
(ピエール・ド・マリヴォー『愛と偶然の戯れ』による)

 関東の後、昔から応援してくださっている方々が「県内で3年生が卒業する前に公演すべき」と応援してくださって、コピスみよしをお借りしての『関東キャスト最終公演』が実現することになりました。
 この時に自治体の後援申請とか諸々学びます。
 この作品は2組のカップルのテンポの良い会話で物語が進みます。これが上手く機能したのは、テンション高めの難しい娘役を、大人な、落ち着いた雰囲気が持ち味のこの代が、上手くまとめ上げて、観やすく仕立ててくれたから。
 また、これまで色々な作品でダブル・カップルを2組とも上手くまとめ上げるのに苦戦していましたが、この作品で初めて上手く着地できた気がします。
 そう言った意味でも、この2016年シーズンの『Love & Chance!』は大きなターニングポイントの1つでした。

2017『Article 30』(創作)
 この年は6月のコピスで新キャストのラブチャを上演することになっていたので、5年ぶりに春季演劇祭とコピスみよしの前・後編の編成ではなく、単独の物語を上演しました。
 古典翻案が多い中、何作品かオリジナルも書いているのですが、今のところ、この作品が原作なしで書いた最後の作品となっています。
 この作品は『世界人権宣言』について、その審議過程の記録をもとに描いた物語。60分間、膨大で小難しいセリフをひたすら話し続ける舞台。この時はラブチャとラブチャの谷間ということもあって、とにかくしっかりセリフを言う稽古も兼ねていました。少しやりすぎた感はありますが、それまでの作品とは全く毛色の違う作品に仕上がりました。
 いつか、会話だけの60分ではなく、もう少しきちんと作戦を立てて作り直したいのですが、演劇部でするのも、稲葉組でするのも違う気がして、上演する場所がないな、と……

2017『Love & Chance!』(翻案)【壮行公演】
(ピエール・ド・マリヴォー『愛と偶然の戯れ』による)

 その背景から県中央や関東でもノーマーク、関東後も『新座柳瀬って?』とか、『マリヴォーって?』という反応が圧倒的でした。
 ですので、6月のコピス、7月の新座市民会館での壮行公演で初めてご覧頂いた方が多かったと思います。作品的には3年の卒業に伴いキャストの変更。結果、『娘役3年・男役2年』から『男役3年・娘役1、2年』となって、バランスが変わり、作品の印象もかなり変わりました。この時は作品をリライトしなかったので、その影響も大きかった。
 また、SNSの運用を変えたのも、このタイミング。当時、Twitterはツイートを見るためだけに使ってましたか、この頃から広報にも使うようになりました。この時のコピスや新座市民会館での壮行公演ぐらいから、覚悟を決めてSNSでの発信量が増やして『まずは知っていただく』ように頑張り始めました。その甲斐あってか、直接なりSNSなりで、上演の感想を頂けることが増えてきて嬉しかった。
 全国に出るなんて一生に一度のこと、自分たちの作品を作風も含めて知ってもらえる最初で最後のチャンスだと思って覚悟を決めたのでした。

2017『Love & Chance!』(翻案)【宮城総文】
(ピエール・ド・マリヴォー『愛と偶然の戯れ』による)

 この作品のドラントとアルルキャンは劇作の経緯からも圧倒的に難しいけれど、この時の2人は無限の努力でそれ乗り越えました。しかも、練習量が見えると斜に構える観客が増えるのに、終演を迎える頃には皆から応援されてる。
 また、後に3年間続いた男子2人目となるオルゴン。今でも語り継いでいる『新潟薄着外出風邪っびき事件』を筆頭に調子に乗って逆鱗に触れること数度。でも、お芝居へ努力は惜しまず、とぼけた父親役を好演、この役は彼あってこそ。
 講評では「セリフが早過ぎて、観客には何も伝わらなかった」と表されますが、幸せなことに終幕と共に響いた拍手と指笛は、講評とは食い違う反応を伝えてくれました。今だに初対面の方にこの作品の感想を頂くことがあるくらい、観客に愛された作品でした。
 そして、表彰式で起こった『ラブ・アンド・チャレンジ事件』。どよめく客席、気付いた方多数。部長がその場で『チャンスです』と伝えても、確認することも、訂正することなく、ただ賞状を突き出すのみ。
 こうして初めての全国の表彰式は終わったのでした。
(第63回全国高等学校演劇大会 優良賞)

2017『Lonely My Sweet Rose』(脚色)
(アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ『星の王子さま』による)

 全国大会が終わって、本当は別の演目の予定だったのだけど、準備期間が足りないなど色々あって、『Lonely My Sweet Rose』を再演することにしました。でも、小磯さんを中心に考えると、歴代の配役の中でこの王子さまが一番よく似合っていたんじゃないかなと思います。
 直前までアルルキャンだったバラは気高いヒロインを演じ、オルゴンだった飛行士は王子に優しく寄り添い、リゼットだったキツネはしっかりと『絆』を説く。ラブチャとは正反対のしっとりとした作品でしたが、理想的な星の王子さまでした。
 脚色は『王子さまとバラ』のラブストーリーとして構成しました。しかし、県中央の講評では「王子さまと飛行士の関係性が弱い。そもそもこの作品は……」と始まってしまう。物語の解釈に一つしか正解がないと思うのはなかなかに狭量な感じだと残念に思ったり。でも、その一方で、歴代の作品の中で芸術劇場のスタッフさんに一番誉めてもらったのはこの作品でした。
 この作品はコンクール演目では初めて、エンディングだけですがホリゾントを使い、ドライアイスとフォグマシンも使った作品でした
 背景で音楽が流れているので、音声はカットしてますが、試しにエンディングの様子を映像で紹介してみます。
(第66回埼玉県高等学校演劇中央発表会 優良賞)

2017『Love & Chance!』(翻案)【高校演劇サミット】
(ピエール・ド・マリヴォー『愛と偶然の戯れ』による)

 前年度見に行って感動した『高校演劇サミット』にエントリーし、ありがたいことに上演校に選んでいただき、大きなホール用に作ってきたラブチャを小劇場で上演する機会を頂きました。
 しかし、好事魔多し……
 12月に入って、インフルエンザが大流行
 小屋入りするまで体調不良が相次ぎ、もし1年間付き合ってきた作品じゃなかったら上演できなかったかもしれません。
 でも、バタバタしましたが、柳瀬で初の東京公演で新たなお客さまの前で上演できたのは嬉しい出来事でした。
 そして、この公演で得た経験はその後の小劇場公演や稲葉組へと繋がっていきます。特に黒猿・黒太さんの華やかな照明に出会えたことはホントに幸運なことでした
 そういった意味で高校演劇サミットはその後の活動の大きなターニングポイントでした。

2017『Eliza! 愛の鞭!?編』(翻案)【ハイタン】
(ジョージ・バーナード・ショー『ピグマリオン』による)

 愛知県で開催される「ハイスクール短編演劇祭」に参加するための名古屋遠征。
 本当は3月の合同公演で精華さんと初顔合わせとなるはずでしたが、たまたまこの遠征の予定が先に入りました。大会以外での県外遠征はこの時が初めてで、高速バスでの移動もまた新鮮な体験でした。
 この遠征を組んだのは、卒業後に演劇を続ける部員がいたからです。色々考え方はあると思いますが、僕にできることも教えられることも限られているし、お客様の前で演じた経験の方が確実に部員を育ててくれると思うので、その機会をたくさん作りたい。
 この時点での最西端となる公演。初めての自主遠征だったので、色々慣れないことの連続でしたが、ところ変わると、お客様の反応も変わるものだなといい勉強になりました。
 まぁ、短編があまり得意ではないということも良く分かりましたけど……

2017『Merry-Go-Round!』(創作)
 精華高校さんとの合同東京公演『愛もない青春もない旅に出る』、会場はシアター風姿花伝でした。
 宮城総文の会場で初めてお会いした鳥頭先生とオノマさん、そこから話が進んだ合同公演。精華さんは『大阪、ミナミの高校生2』を、ウチは『The Inheritors』を20分ぐらい短くして再構成した『Merry-Go-Round!』を上演。
 合同公演とはいえ、初めての小劇場での主催公演ですので結構バタバタ。でも、会場下見をしたり、フライヤーを手配したり、技術打ち合わせをしたりと、公演を作っていく過程を体験できたのは大きな経験値となりました。
 この公演でなにより感じたのは、精華さんの『覚悟』。当時、すでに『旅する演劇部』として名を轟かせていた精華さんの場当たりやリハ、本番を観て、経験値の高さに圧倒されました。
 演劇部の活動の中心に何を置くべきか、考え始めるきっかけとなった公演でした

2017『The Salvation』(脚色)
(ロバート・ルイス・スティーヴンソン『ジキル博士とハイド氏』による)
 2017年度の最後は甲府南高校で開催された『第10回山梨オープン小演劇祭』に参加しました。
 高校演劇サミット2016で観て以来、文化祭や地区、県などの機会に甲府南さんの公演を観に通い、山梨オープンの参加申し込みが始まるとすぐに申し込み、参加することに。
 作品はスティーヴンソンの『ジキル博士とハイド氏』を脚色した会議もの。個人的にはかなり好きなタイプの会話劇なのですが、エンタメにまで昇華できなかったのは反省点。
 いつかはアーロン・ソーキンみたいな高速な会話劇を書けるようになりたいと
 さて、山梨オープンは泊まりがけでしたが、この期間でナカムラ先生から部活の様子を見せて頂いたり、お話を伺ったりしたことは、どれも貴重な体験でした。特に驚くほど生徒のことを把握されている様子は圧巻、あの作品が生まれる背景を垣間見た瞬間でした。

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